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台湾音楽の始まり

恵まれた自然環境と多元的な歴史が、台湾に多種多様な文化を育みました。その中でも音楽は非常に種類が多く、貴重な文化の宝庫だと言えます。

 

台湾音楽の守護者である台湾音楽館は、台湾音楽の保存や研究、創作の奨励、普及と教育、音楽資源の共有などを通して、台湾音楽の美を皆様にお届けしています。

台湾音楽の始まり
台湾音楽の守護者

「民歌研究に対するあの衝動 、自分の民族的感情が目覚めようとするあの感覚は否定できるものではない。」

─バルトーク・ベーラ(ハンガリーの音楽家)

 

「台湾」─単なる地理上の名称だったこの言葉は、歳月によって洗練され、この地域の文化を表わす固有名詞の一つになりました。この島では古くから原住民の音楽がいたる所で奏でられていました。山林を流れる野生的な歌声は、1960年代の「民歌収集運動」により、前人の残した足跡が一つ一つたどられ、各地の魅力的な民謡が収集されました。福佬(閩南民系漢族)や客家の音楽、戯曲などの音楽文化は、清代に海を渡って台湾にやって来た先人たちによってこの地にもたらされ、各地でしっかりと根を下ろし、街角で歌い継がれてきました。こうした美しいメロディは祖先が私たちに残してくれた貴重な文化遺産の一つだと言え、台湾文化の精華でもあり、世界の民俗音楽を結ぶ大切な要素の一つなのです。

我々は自分たちの音楽が必要なのではないだ ろうか?」

我々は自分たちの音楽が必要なのではないだ ろうか?」

─史惟亮(台湾の作曲家)

 

音楽界にこのような問いかけがなされたのは、台湾音楽館を台湾音楽の守り手とするよいきっかけとなりました。

 

台湾音楽館は、1990年に文化建設委員会(中華民国文化部の前身)によって設立された「民族音楽センター」 をその始まりとしています。同センターは2003年に国立伝統芸術センターの出先機関となり、名称も 「民族音楽研究所」に改められました。その後、2008年に組織の併合が行われ、「台湾音楽センター」 に改称されましたが、2012年5月に中華民国文化部が設立されると、「台湾音楽館」に再び改称されました。 台湾の音楽への探求はここから始まったと言えます。

 

台湾音楽館は台湾音楽の守護者という使命を担い、この台湾音楽の荘園を運営するため、尋(収集)・蔵(保存) ・醸(発展)・迴(鑑賞)─この四点を果たすべき機能・役割としています。

 伝統音楽の発掘と研究の継続

1967年に音楽家の許常恵による民間歌曲採集運動を通して陳達(恒春民謡の歌い手)と恒春民謡が 見出されました。このほかにも台湾音楽の根幹となる歌曲が各地で発見されたのです。2006年の 陳達100歳の冥誕(死後の誕生日)に「失われた恒春半島の歌声─吟遊詩人陳達」と題して発売さ れた書籍(CD付き)は、台湾民族音楽史における重要な足跡の一つとなりました。同じく恒春半 島出身で満州民謡の歌い手である張日貴は80歳の高齢です。2013年に出版された書籍(CD付き) 「恒春半島満州民謡歌手─張日貴の歌唱芸術」には、張日貴が伝承する民謡が記録されており、そ の豊かな音楽世界についての詳細が記されています。台湾音楽館ではこれまでと同様、伝統技芸 のルーツを探求する一方でその伝承を目指し、楊秀卿(台湾歌仔説唱の歌い手)の説唱(語りと歌)や 陳冠華(台湾戯曲の楽師、作曲家)の弾き語り、ブヌン族の弓琴、タイヤル族の口簧琴、パイワン族 の鼻笛などの貴重な音楽資産の発掘と研究を続けていきます。

  台湾音楽の収集と保存の継続

音楽資料館は前人の足跡に関する研究とその調査結果を保存するために開設されました。 この資料館には、一次資料とクラウドコンピューティングによるデータベースがありま す。北管の楽師・荘進才の曲牌、南管の楽師・蔡添木の経歴資料と音源のほか、台湾音 楽の重要な音楽家が一覧できる「台湾音楽群像データベース」、台湾の主要な音楽ジ ャンルを網羅した「台湾音楽情報交流サイト」もあります。アジア太平洋地域と世界 の音楽に関する文献や史料、音源などの資料が揃っており、ご利用の皆様に世界の音 楽情報をご提供しています。

  台湾音楽の伝承と発展

台湾音楽館では様々な企画やイベントなどを通して伝統芸能に携わる人材の発掘や交流を行います。このほか、演奏技術の永続的な継承を目指し、「絲竹音楽創作キャンプ」や「巨匠の門徒と仲間たち計画」、「民族音楽創作賞」などの開催を通して人材を発掘するだけでなく、新生代の作曲家と音楽家を結び付 けることにより、台湾音楽に関する豊富な所蔵資料を活用し、新たな系統や潮流を育みたいと考えています。それはまるで技 術と時間により醸されたフレッシュな果汁が美酒に生まれ変わるかのようです。

  音楽の果実を人々に届ける

大自然に育まれた美しい民謡は台湾の声の記録です。共に歩んできた長い歳月を経て未来に目を向けた時、それは意味あるものだったと気づくはずです。台湾音楽館は台湾音楽とその歴史を保存するだけではなく、台湾音楽の発展と普及を後押しする窓口でもあります。「宝島歌謡祭」や「あの人。あの歌。あの時─許常恵文書展」、「台湾伝統音楽回顧展」、「台湾作曲家手稿展」など、多彩な展覧会や講座が開催されています。また、台湾音楽を生かしたオリジナリティ溢れるコンサートや音楽家のCDの発行、楽譜の出版などの計画も進められており、台湾音楽の世界を系統的にご紹介しています。

 

前衛とは古典を改めて発掘することである1
前衛とは古典を改めて発掘することである2
前衛とは古典を改めて発掘することである

「歴史を振り返ってみると、どの時代の作曲家であっても、常に自らの属する民族文化がその根底にあり、そこから創作を始め、自らの芸術の魂を作り上げるのである。」

─許常恵(台湾の作曲家)

 

伝統文化と現代美術は互いを拠り所としながら共存共栄しています。だからこそ私たちは伝統を守り、それを新たな創造の後ろ盾として現代的な要素と結び付け、より多くの可能性を生み出そうと考えています。将来的には台湾音楽史の編纂やジャンルを超えた共作、芸術関連交流サイトの設置、国際的な文化交流などを通して、文化的な記憶と融合させたいと思っています。また、台湾音楽の素材を有効に活用できる場を構築し、台湾音楽をより広い世界の高みへと導き、多彩な要素を取り入れる一方で、現代美術の分野でも前人のエッセンスを吸収できればと願っています。台湾の音楽はここから始まり、あらゆる場所へと伝えられてゆくのです。