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水袖とルージュ

  • 日期:2013-03-08

水袖とルージュ

この劇は従来のものとは違い、下地となった伝記や物語がありません。脚本家の王安祈は「全くの想像から誕生した物語」だと言っています。

舞台は虚構の世界「梨園仙山、戯劇王国」で起こります。ここに住む人々は歌うように話し、鑼鼓點(中国の伝統打楽器奏法)のように足を踏み鳴らして歩きます。

主人公は舞台劇によく登場する楊貴妃の霊(仙后)と唐明皇(玄宗)の霊(仙魂)です。仙宮内で仙后となった楊貴妃は、常々彼女の本心を描いた作品が一つもないと感じていました。そこで彼女は、馬嵬(陝西省興平市)で唐明皇に自殺を命じられた魂の嘆きを「角色附身(役柄が体に乗り移ること)」で癒していました。一方唐明皇の霊は、行雲一座の開祖として崇められ、行雲一座を守護する霊となっていました。

ある日この一座は宮中での公演を命じられますが、唐明皇の霊が楊貴妃の霊の前に出ることを躊躇した為に演者が舞台で失態を犯し、一座は宮廷を追い出されてしまいます。一座の舞台が焼失したときも、唐明皇の霊は一座を守ることができませんでした。しかし、唐明皇の霊は一座の座員たちに勇気づけられ、楊貴妃の霊と向き合う決心をして再度宮廷に上がり、自分の役の中で後悔の念を歌い上げるのです。

本劇は両ホールが主催した第五回TIFA台湾国際芸術祭参加作品であり、《孟小冬》、《百年戲樓》に続く、三部曲の最終編です。演出家の李小平は、この劇は演者が自分と役との間を行ったり来たりする反復弁証である考えています。舞台には何枚もの水袖戯服が掛けられています。本番前に着る襯底水衣に身を包む群衆演者、護領、両者が緊密に共鳴することで、虚構の世界「梨園」一座の命運的な情景を織りなしています。