1995年に設立された国光劇団は国防部三軍劇隊の精鋭によって組織された教育部所属の劇団でしたが、2008年に文化建設委員会国立台湾伝統芸術総処籌備処の傘下となり、2012年5月に中華民国文化部が設立されると、国立伝統芸術センター所属となりました。国光劇団は伝統演劇の継承と保護をその使命と目的にしています。伝統文化を受け継ぎながら現代思想にも影響を与え、イマジネーションの世界を広げています。そして、新たな芸術文化の誕生を促し、文化の脈動を共に分かち合える場を築くべく努力しています。
「伝統」は新たな創造の基礎となるものです。国光劇団は伝統とモダンを融合させることにより、社会の動きと演劇を結び付けようとしています。文学や歴史、伝説などから新たに構想を練った演目は、新編崑劇『釵頭鳳』、『梁祝』、台湾三部局『媽祖』、『鄭成功と台湾』、『廖添丁』のほか、『大将春秋』、『地久天長釵鈿情』、『牛郎織女天狼星』などがあります。このほか、様々なテーマの伝統演劇の上演も行われています。演劇を時代の変遷と結び付け、伝統文化の記憶を呼び覚まし、観客の皆さまから熱い支持を集めています。
新しい世紀に足を踏み入れた今、国光劇団は京劇の現代化と文学化に向けてより一層の努力を重 ねています。舞台芸術の美を斬新に切り拓き、文化の香り高い「台湾ならではの創意」をご覧いただいています。近年の新編作品には、『王有道休妻』、『三個人児両盞灯』、『金鎖記』、『青塚前の対話』、「伶人三部曲」の『孟小冬』や『百年戯楼』、『水袖と胭脂』、『十八羅漢 図』、『関公在劇場』などがあります。現代文化の潮流にマッチした作品は、演劇界から文学界へとジャンルを超えて歩を進め、各界から好評を得ています。その活動は台湾・中国文芸界と学術界からも重視されています。
京劇は伝統的な芸術表現を代表する伝統芸能で、中国の古典文化から生じた表現技法をその源としています。2010年に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によって人類共通の無形文化遺産に認定されました。国光劇団は伝統に立脚しつつ、積極的にその要素を広めて現代美術にもインスピレーションを与え、より幅広い芸術表現を模索しています。交響楽(2007年『快雪時晴』)、モダンダンス、打楽器の演奏、視覚効果を生かした舞台(2009年『オーランド』)、シェークスピア劇(2012年『クレオパトラと彼女のピエロたち』)など、ジャンルを超えた交流を行いながら、国光劇団の積極的な創作姿勢と多元的な活力をご覧いただいています。
「文化」は世界を行き来するのにふさわしい「カギ」となるものです。良作は永遠に愛され ます。近年、国光劇団は質の高い演劇を次々に上演しており、台湾と中国のみならず、世界各国からも注目を集めています。これまでフランスやドイツ、イタリア、チェコ、ブラジル、ロシア、シンガポール、中国、香港などから招かれ、国際的なイベントにも多数参加していま す。このほか、文化部のグローバルな活動に合わせ、新編京劇や新旧古典作品を中国や世界の舞台で上演することにより、「台湾のイメージ」を築き上げただけでなく、こうした活動を通して文化交流網を構築し、台湾独自の舞台芸術というソフトパワーを積極的に世界の舞台で披露しています。「文化」として輸出されている、「メイドイン台湾の京劇」に見られる新たな美意識は、中国の知識人からも高く評価されており、多元的で自由な創作が台湾・中国の文化的潮流をリードしています。
国光劇団は台湾に京崑戯曲文化を根付かせ、その普及に努めるため、学校や地方での芸術教育を目的とした巡回公演と人材の育成にも力を入れています。様々な年齢層の楽しみ方に合わせて、教材の出版や多元的な芸術教育普及活動も行っており、台湾の芸術分野における創造力の向上に役立っています。また、こうした芸術教育によって観劇人口を増やし、京劇という演芸の多様な発展方向を活性化させるとともに、地方の皆様に芸術に触れる機会を提供するなど、地方に人材育成の場を築き、その地に根ざしたあり方を目標に邁進しています。
国光劇団は古典のよさを新作に生かした新編演劇や優れた俳優陣により、各種芸術賞に輝いています。2000年に『大将春秋』で電視金鐘賞を受賞、2002年に『天地一秀才-閻羅夢』で電視金鐘賞を受賞したほか、第1回台新芸術賞十大舞台芸術の一つに選ばれ、続く2003年にも『王熙鳳-大鬧寧国府』で第2回台新芸術賞を受賞し、九大舞台芸術の一つに選ばれました。また、2005年に『三個人児両盞灯』で第4回台新芸術賞審査員特別賞を受賞、2006年に『三個人児両盞灯』で電視金鐘賞、2007年に『金鎖記』と『青塚前的対話』で第5回台新芸術賞十台舞台芸術の一つに選ばれ、2011年にも『百年戯楼』で第10回台新芸術賞十台舞台芸術に選ばれました。2015年には『十八羅漢図』で第14回台新芸術賞を受賞しました。個人の受賞では、2005年に芸術総監督の王安祈が第9回国家文芸賞を受賞、2007年に女優の魏海敏が第11回国家文芸賞を受賞、2011年に監督の李小平が第15回国家文芸賞を受賞、同じく2011年に老人役の唐文華が第15回台北文化賞を 受賞しました。
国光劇団はこれからも伝統的な戯曲を上演する中で、新たな創造を
ご覧にいれます。私たちは 信じています。戯曲は過去のものではな
く、今正に生み出される現在進行形のものなのだと。